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東京地方裁判所 平成9年(ワ)10953号 判決

原告 株式会社近鉄エクスプレス

右代表者代表取締役 A

右訴訟代理人弁護士 野邊寛太郎

同 野邊一郎

同 安藤真一

被告 株式会社富士銀行

右代表者代表取締役 B

右訴訟代理人弁護士 嶋倉釮夫

同 三嶋枝里香

主文

一  原告の請求を棄却する。

二  訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由

第一原告の請求

被告株式会社富士銀行(以下、「被告銀行」という。)は、原告に対し、五〇〇万一〇六二円を支払え。

第二事案の概要

一  (争いのない事実)

1  日本オウキッド漁業株式会社(以下「日本オウキッド」という。)は、被告銀行に対し、平成九年二月一三日、左記の預金債権を有していた。

(一) 定期預金 五〇〇万円

(二) 普通預金 一〇〇四円

(三) 当座預金 五八円

2  原告は、東京地方裁判所に対し、原告を債権者、日本オウキッドを債務者、被告銀行を第三債務者とし、前項の預金債権(以下、「本件被差押債権」という。)を被差押債権とする債権差押命令を申し立て(東京地方裁判所平成九年(ル)第八〇三号)、同裁判所は平成九年二月一二日、債権差押命令を発し、右命令正本は、同月一三日被告銀行に、同月一八日日本オウキッドに、それぞれ送達された。

3  右債権差押命令正本が日本オウキッドに送達された日から一週間が経過した。

二  (本件の争点)

原告が提起した本件取立訴訟において、本件被差押債権を受働債権とし、被告銀行の日本オウキッドに対する貸金債権を自働債権とする被告銀行主張の相殺が認められるか。

第三争点に対する判断

一  裁判所の認定した事実

1  被告銀行による本件第一及び第二貸付

被告銀行は、日本オウキッドに対し、次のとおり、金員を貸し付けた〈証拠省略〉。

(一) 貸付日 平成六年五月二七日

金額 五〇〇万円

弁済期 平成七年五月二七日

利率 三・五パーセント

(以下「本件第一貸付」という。)

(二) 貸付日 平成七年八月二二日

金額 一〇六七万円

弁済期 平成七年一一月三〇日

利率 三・五パーセント

(以下「本件第二貸付」という。)

2  弁済期変更

その後、本件第一貸付については平成九年五月二四日に弁済期が変更され(乙第七号証の一の「手形貸付①」の「手形期日」欄)、本件第二貸付については平成九年五月三〇日に弁済期日が変更され、さらに同日、残元金七四七万円について平成九年六月三〇日に弁済期が変更された(乙第七号証の一の「手形貸付③」の「手形期日」欄、C証言)。

なお、右弁済期変更に際して手形が書き替えられ、旧手形が返還されたとしても、それは旧手形上の債務が代物弁済によって消滅したことを示唆するだけであって、手形上の債務とは別個の原因関係上の貸付債務まで消滅させるものではなく、右原因関係上の貸付債務については弁済期変更がなされたものと解するのが相当である。したがって、被告銀行による後記相殺が差押え後に取得した債権による相殺となるものではない。

3  相殺の意思表示

(一) 被告銀行は、日本オウキッドに対し、平成九年五月三一日、本件第一貸付の元金五〇〇万円及び利息金三三五六円並びに本件第二貸付の元金のうち二万一七〇九円と、本件定期預金債務の元金五〇〇万円及びその利息債務二万五〇六五円とを対当額で相殺する旨の意思表示をした〈証拠省略〉。

(二) 被告銀行は、日本オウキッドに対し、平成九年七月一日、本件第二貸付の残元金のうち一〇六二円と、本件普通預金債務一〇〇四円及び本件当座預金債務五八円とを対当額で相殺する旨の意思表示をした〈証拠省略〉。

二  判断

右認定事実によれば、被告銀行主張の自働債権である本件第一及び第二貸付債権の存在が認められ、変更された弁済期到来後になされた被告銀行による相殺の意思表示の結果、本件被差押債権が消滅していることが認められる。

以上によれば、被告銀行の相殺の抗弁は理由があるので、原告の請求を棄却することとし、主文のとおり、判決する。

(裁判官 齊木教朗)

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